【稲吉種苗】園芸情報 第32号
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×↓AB型×↓AB型AA型AB型AA型BB型AB型BB型バラバラで「よつぼし」ではありません。「よつぼし」の種子は、その両親品種同士を交配しなければ生産することができません。されてきました。さらに、複数の機関で、いくつかの育種プロジェクトが取り組まれており、構想の第2段階が順調に進行しています。 今後、新しい種子繁殖型品種が次々に開発され、生産者も消費者も、様々な品種の中から自分の好みを選択できるようになれば、やがて従来品種に置き換わる新品種が登場し、栽培面のメリットを活かし、イチゴ生産のイノベーションが実現することが期待されます。品  種美生の宝品種登録出願2016年12月成川昇2020年9月2020年6月うた乃2022年3月ホモ接合(AA型とBB型)の両親からは1種類(AB型)の子供しか生まれない。この子供がF1品種に相当する。ヘテロ接合(AB型)の両親からは多様な子供が生まれる。F1品種から種を取っても、兄弟間でばらついてしまうので品種とはいえない。育 成 者図3 ヒトの血液型を例にしたF1品種の仕組み   上段:両親品種とF1品種の関係   下段:F1品種から採れる種子のバラツキ表1 「よつぼし」に続いて開発された種子繁殖型イチゴ品種ベリーポップすず(MYAGMIE-1)ベリーポップはるひ(MYAGFRA-1)株式会社ミヨシ三重県株式会社ミヨシ三好アグリテック株式会社三重県4.「よつぼし」の誕生から新品種爆発 2004年に品種識別DNAマーカーが開発されると、品種開発者が、違法増殖に対する対抗手段を獲得したことになりました。これを契機に、2008年に千葉県による日本初の種子繁殖型品種「千葉F-1号」が誕生し、続いて2014年に、三重県、香川県、千葉県と九州沖縄農業研究センターの共同研究で「よつぼし」が開発されました。「千葉F-1号」の普及が遅れたため、「よつぼし」が我が国初の実用品種になっています。 「よつぼし」の開発過程では、共同研究者の中で、①種子繁殖型イチゴ品種の最初の成功事例を作る。②それによって、続く品種の開発を促す。③将来、多数育成される種子繁殖型品種の中から、従来の栄養系品種に置き換わる品種を誕生させる。という構想の基で、まず第1段階で消費者に直接評価される観光農園や農産物直売向け農家をターゲットに、食味の良い品種の育成を目指しました。そして、「よつぼし」の品種登録出願から9年が経過し、当初のねらいどおり、「よつぼし」は全国の観光農園や直売農家を中心に広く普及し、食味の良さが高評価を得ています。構想の第1段階を達成したといえ、また、表1のとおり「よつぼし」に続く新品種が開発5.今後の課題 種子繁殖型品種によるイチゴ生産のイノベーションを実現するには、より優れた新品種を次々と生み出すことが最も重要なことは間違いありません。加えて、それら新品種の特徴を存分に発揮させるため、①栽培面のメリットをより大きく発揮する新しい栽培技術の開発。②雄性不稔等を利用した種苗生産コストの低減。③生産者が利用しやすく、かつ、育種開発コストの回収が可能な品種利用許諾システムの確立。これらの課題に取り組み、イノベーションの実現を目指します。40

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