【稲吉種苗】園芸情報 第32号
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定植定植鉢上定植種子繁殖型品種定植定植播種従来品種の慣行栽培体系①二次育苗体系②本圃直接定植体系③生産者が播種から行う体系④実生発生ランナー利用の体系定になることがありますが、この方法では、育苗作業自体が不要になり、育苗施設も必要なくなります。 これら「二次育苗体系」と「本圃直接定植体系」は、セル苗を購入して用いることを想定していますが、種苗コストを下げるため、単価の安い種子を用いる「生産者が播種から行う体系」や、間隔を空けて少し早めに本圃定植し、それから発生するランナー株を隣のスペースに挿して育てる方法「実生発生ランナー利用の体系」を用いることもできます(農家の自家増殖が認められた品種に限る)。 このように、種子繁殖型品種を用いると、育苗労力が大幅に軽減され、労働生産性の大幅改善が可能になります。1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月収穫収穫収穫収穫収穫親株保管セル苗を購入して鉢上げ育苗慣行に近い安定した栽培法セル苗を購入して本圃に直接定植育苗労力を90%削減セル苗単価に比べ種子単価は低いランナー増殖・育苗育苗育苗発生ランナー挿し実質的種苗コストの低減親株確保図2 従来品種と「よつぼし」の栽培体系図親株定植て育種されます。この原理は、図3の上段のとおり、ヒトの血液型に例えると分かりやすく、AA型やBB型といったホモ接合の親品種を作り、その親品種の間で交配して種子を生産することになります(ホモ接合同士の親から生まれる子は1種類で均一です)。そのため、育種では、親品種の作出過程と、交配したF1系統の中で優れた系統を選抜する過程と、2段階必要になり、ただ単純に優れた系統を選抜するだけの栄養系品種に比べ、遙かに難しい仕事です。 それにもかかわらず、種子繁殖型品種でも、栄養系品種と同様にランナーが発生し、簡単にクローン増殖できてしまいます。そのため、品種の権利が守られず、勝手にクローン増殖されてしまうと、品種開発者は育種のコストを回収できず、民間企業ではビジネスとして成り立たないことになりかねません。これが、今まで種子繁殖型品種がほとんどなかった原因と考えられます。 なお、図3の下段に示すとおり、F1品種はヘテロ接合になり、その実から採れる種子は様々なタイプが出現します。そのため、「よつぼし」の実から採れる種子は、収穫収穫収穫収穫収穫3.育種方法について このように、栽培面で大きなメリットがある種子繁殖型品種ですが、農業利用できる種子繁殖型品種は世界的にもごく少数です。その原因は、種子繁殖型品種の育種が、栄養繁殖に比べて手間が掛かる点にあります。 イチゴは自殖により弱勢が生じるため、F1品種とし39

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